気違い部落周遊紀行

人権問題や社会問題にかかわり原理的な対応をなされる方からはお怒りの声が聞こえそうなタイトルの本。

20180712-01

この本を読もうとしたきっかけは、「気違い部落」と言う映画が1957年に製作され、そのロケが郷土で撮影された、と言う話を聞き、興味を持ったことに端を発します。
2つの差別用語がタイトルに入っているので、なかなか世には出て来ないのですが、この文学もそしてこれを基にして作られた映画も高い評価を受けているそうです。が、同時にこれは私小説的な要素も多分にあり、文中に「著者にとっては、この名称は村の英雄たちとの関係から、若干の面倒に値する危険がある」と書かれている通り、ウィキペディアの「きだみのる」を見ると恩方村の地元では「気違い」扱いへの反撥が激しく、きだに鎌を振りかざして寺からの立ち退きを迫ったと書かれています。
タイトルの2つの差別用語とともに、村人を英雄と呼びながら話を進めていくので、何か鼻につくのですが、その「何か」がなかなかわからなくそれがまたイライラを募らせるのですが、ショートショートのような超短編を読み進めていくごとに、うんうんとうなずき先ほどまであったイライラからストレスフリーになっていきます。
「部落」と言う言葉は、一般的に同和問題で代表される意味のない差別を余儀なくした歴史から発生した言葉と、「集落」の意味で里山の人が自らを言う言葉とあります。が、後者だとしても、都会に対応する卑下の意識はあったと思うのです。
士農工商という身分制度でも名目は農民は上位にあってもその生活はとても厳しく、2つの「部落」は過酷さに差異はあれども、中近代では困窮の歴史だと思うのです。そんな困窮の中で、でも人々は粛々と生きていきます。

今、このタイトルの本を目にした時、誰もが頭の中で過去の知識をフルに活用してどんな話だろうか?を推測します。
その時、やはり「気違い」と言うワード、そして「部落」と言うワードから想像すると思います。特に知識がある方、学びが多かった方は、「ムムム」と思うと思うのですが、たとえば文中に小さな桜の木について問うと、その横に芭蕉の句碑があり、だからありがたいと言われ「木の大きさと芭蕉から今までの年数を考えるとおかしい」と反論すると「いやこれは5代目だから」と平然と回答されるシーンがあります。本来はその木が重要ではなく、5代前の木が重要であり、そこで芭蕉が句を読んだことが重要なのが本末転倒になっている。高じて自分は26代目だ、と言うが、人間誰もが父と母から生まれるのでそれが何処の誰兵衛かはわからずとも必ず26代前の先祖はいるはずなのに、それを知っているだけで優位に立とうと思う人間の性を書いています。
つまりは、言葉に問わられて本質を見忘れるな、と言うのがこの本のタイトルなのでしょう。

そう言う意味では遠藤周作氏も同じようなことを何度も書いています。自分の経験値で作り上げてしまう神と言う言葉に惑わされるのなら玉ねぎでもいい、と言います。神は僕らの想像を超えた存在だから、自分の頭の中には作り上げられませんが、それでも映画のワンシーンや絵本の挿絵などで、真っ白な衣服をまとい白髭の爺さんを想像してしまうでしょうし、そこまで行かなくても人間の形を想像してしまいます。
そうした「常識」や「慣例」を破りながら、読む本なのでしょう。

そうは言っても逆はまた真ならずや、です。やはり人が嫌がる言葉、差別を促す言葉、聞いていて気持ちの良くない言葉を使うのはちょっとね、と思ってしまいます。


当初、何か鼻につく内容と記しました。実はそれは結構自分が持っている「常識」だったり住んでいる集落の「常識」だったりする点だったのです。「気違い部落」と言うのはまさに自分のことであり、自分の住む町だったのです。それを上から目線のように冷静に分析されているのが嫌だったのでしょうね。時折フランス語を交え偉大な先達の哲学者らの言葉を引用し、「好きでない自分の部分」が丸裸にされ曝(さら)されるのが嫌だったのかも知れません。
しかし確かなことは日本は「気違い部落」だったのです。いいも悪いも含めて・・・

今、この映画について仲間たちが存在を調べています。見つかったら上映会をしたいね、と言っています。
上映会を楽しみにしています。

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