公開される私刑と何もしてもらえない私刑

〈WANTED〉〈あなたです!!  徹底的に追いかけます!! 覚悟してください!! 〉
上野近辺に店舗を構える眼鏡小売店「めがねお~」。その御徒町店のHPに物騒な言葉がアップされたのは、2月7日のことだった。
遡るその3日前、店は万引きの被害に遭遇。激怒した社長が、防犯カメラに映った“犯人”のモザイク付画像をアップし、3月1日までに返却か弁償をしなければ、モザイクも外す、と宣言したのだ。

この言動、すぐにマスコミに報じられ、物議を醸すことになったのは周知の通り。まずは騒動そのものを、渦中のご本人に振り返ってもらおう。
「店長から“緊急です”と連絡があったのは、2月4日の夕方6時前でした」
と述べるのは、社長の張谷満氏(59)。PC量販店の営業本部長を経て、約20年前に同社を設立した。従業員は10名程度、年間売り上げは1億から1億5000万円の規模である。
社長が続ける。
「聞くと、俳優の哀川翔さんプロデュースの眼鏡『SAMURAI SHO』が7本なくなった、おそらく万引きです、と。瞬間、頭に血が上りましたよ。あれは予約制の限定発売で、1本約3万円。計21万円の損失は、うちみたいな会社にとっては洒落になりません。何とか捕まえられないかと思い、防犯カメラの映像を確認したら、やっぱりすぐに不審な男が見つかったのです」
映像をみると、男は棚の前に立ち、「SAMURAI SHO」を下のトレイに降ろし、死角に消える。そんな動きを2度繰り返し、いつの間にか店を去っていたのだ。2月13日になって逮捕された容疑者と酷似している。
「ちょうどあの男が来る前には眼鏡が7本あり、去った後はない。確信を持ったのは翌日です。以前店に勤めていた従業員が、いま近くの中古ブランド眼鏡の買取店で働いている。彼に訊いたら、その夜、『SAMURAI SHO』をまさに7本売りに来た男がいるというじゃないですか。盗品ぽいから買わなかったと言うので、慌てて男の画像を送ると“こいつです!”と断言するのです」
間違いない――そう思った社長は、さっそく警察に被害届を出した。が、反応は鈍かったという。
「画像には、男が店から出るところは映っていない。これでは、その男が万引きしたことの証明にはならないのだとか。買取店の話もしたけど、同じでした」
犯人の顔までわかる。それでも泣き寝入りしかないのか。眠れぬ夜を過ごした社長が思いついたのがHPでの“指名手配”だったのだ。
「警察が動かないなら、自分がやるしかない、と。店長も責任を感じて謝ってばかりで、店の雰囲気も悪かった。自分が何か手を打つしかないと思ったんです。うちの土日の売り上げは30万~40万円程度。利益はその何分の1かですから、これで数日分の労働がムダになってしまう。また、後でわかったのですが、この男は、万引きの日の昼にも店に来て、下見めいたことをしていました。悪質ですよ」
とはいえ、もちろん葛藤はあったという。
「弁護士に相談すると、やはりリスクは高い、と。名誉毀損やプライバシー侵害で訴えられる可能性もあるそうです。でも、うちのような小さな会社にとっては、これくらいしないと取り返せない。“自衛”です。警察だって、殺人や強盗などの事件に人員を割くのはよくわかりますし……。それに、顔を出せば“ここでは万引きはできない”という抑止力にも繋がると思いました。それでも結局、決断まで2日半悩みまして……」
ようやく7日の公開に至ったというワケなのだ。
記憶に新しいのは、3年前、古書店「まんだらけ」が同じく万引き犯のモザイク写真をアップしたこと。結果、犯人は検挙された。
「それも頭にありました。当時、私も『まんだらけ』はけしからんと思っていましたが、同じことをやられてみるとよくわかる。今回の件は、リスクも、どんな批判でも甘んじて受ける覚悟を持っています」

これが大きく報じられたのは、全国で同様の事態が相次いでいたからだ。
その直前、千葉市内のファミリーマートや神戸市内のセブンイレブンが、「万引き犯」の顔写真を、こちらは店にモザイク無しで掲示していたことが発覚。
 テレビや新聞は、〈「人権侵害」指摘も〉と見出しを打った朝日新聞はじめ、多くは「店主の気持ちはわかるが、モザイクを取ることには、問題点もある」式の取り上げ方をした。

曰く、その「問題点」とは、大別すれば3つ。
「万引きという罪とネット公開という罰のバランスが取れていない」「法的に名誉毀損、プライバシー侵害に当たる」「法治国家で禁じられている私刑に相当する」
これらを弁護士や“識者”などがコメントするのである。こうした点に留意してか、先のコンビニ2店は早々に掲示を取り下げている。
ところが、だ。
NPO法人「全国万引犯罪防止機構」の福井昂事務局長は言う。
「確かに人権侵害になるかもしれない。一方で店主たちがそれほど困っているということをどれだけ理解してもらえているのでしょうか」
一昨年の全国の万引きの件数は、11万7000件余り。うち検挙されているのは7割で3割は見逃されてしまっている。しかも、検挙率はここ10年で5%低下しているのだ。被害金額は年間4615億円、つまり、1日12・6億円の計算になる。
「店を責めるのはお門違いではないかと思います」
と言葉を継ぐのは17年間この世界に携わる、万引きGメンの伊東ゆう氏である。
「以前は万引きの主な動機は、“魔が差した”的な“出来心”ゆえのものだった。しかし、最近は、大量、集団、高額、換金目的といった、シノギ的なものが目立ち、悪質さが増しています」
「めがねお~」の“犯人”も犯行の数時間後にさっそく換金を図っていたのは先に記した通り。
「こうした中で、被害者は苦しみ続けている。大型のチェーン店などでは、毎週のように大量万引きが起きていますが、警察もなかなか取り合ってくれない。私が関わった店で酷いところでは、ピーク時で売り上げの10%が持って行かれていたなんてところもありました。その責任は店長に押し付けられますからね。万引き犯を捕まえた時、殴りかかる店長もいましたし、そうでなくても大抵は“ぶっ殺してやる”という目をして睨んでいるものですよ」

「週刊新潮」2017年2月23日号 掲載

思いおこすのは
2005年2月16日放送のカミングダウト(日本テレビ)にてタレントのAさんが半年間に渡り『集団強盗』を繰り返し、店を潰していたと発言したこと。
もう時効過ぎとはいえ堂々と悪びれずもせずに自分の犯罪をクイズの問題にすることに憤りを覚えました。
僕も一時コンビニエンスの店長をしており、バイトの店内不正があったり、また駅前だからキオスクで買ったのかうちの店の中の雑誌を脇に丸めたのか判断がつかなかったり、その他もろもろで僕の店も結構の不明金が生じました。

万引きや犯罪による商品ロスについて、上記トピックスは
「問題点」とは、大別すれば3つ。
「万引きという罪とネット公開という罰のバランスが取れていない」「法的に名誉毀損、プライバシー侵害に当たる」「法治国家で禁じられている私刑に相当する」
と記しています。
このうち最後の「法治国家で禁じられている私刑に相当する」だけは気を付けなければならない。もっと言えば死守しなければならない重要な出来事で、これを外せば無法地帯になってしまいます。

とはいえ、自分たちにも生きていかなければならない、真っ当に働いた上では生活権と言う権利が保障されているはずのものが、違法行為でその権利さえ保障されないとしたらそれも無法地帯であると思います。
それに対して『万引き防止』は店の責任。店側が何とかすべきでしょう、と言われるのなら店を運営する側に立つ瀬はありません。価格競争と豊富な品数、お客様のニーズでその傾向はどんどん進んでいきます。故にバイトを雇うのもギリギリまで縮小していれば、目の届かないところは生じます。
罪なき者が私刑にあうことは、通りがかりの人が見ず知らずの人に刃物で刺されるようなものです。歩行者は犯罪者がそばに来るかどうかを気を付けながら歩かなければいけない、とすれば、それは行政の国民を守る義務違反であり、そのまま店舗で言えば、買い物を楽しんでもらう事だけに集中するのが勤めなんです。

被害者の「私刑」と加害者の「私刑」はあくまでも平等にNoと言うためには、こうした店主の悩みをきちんと吸い上げて関係各位が対策を練らなければいけないでしょう。
そうしないと世の中開架式店舗は絶滅し、すべてがインターネット前払いによる閉架式の倉庫販売業に変わってしまい、ウィンドゥショッピングをはじめとする買い物の楽しみがない世の中になってしまうような気がします。

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