KANO・1931海の向こうの甲子園

遺憾千万とお叱りを受けるかもしれないけれど、もし日本のアジア侵略が残したもので「よいこと」があるとすれば、困窮の悲しみを省みながらも誤解を恐れずに言えば言葉を奪った結果の功績を鑑みれば、意思の疎通ができて仲間として一丸になれたことなのかもしれません。もちろん僕が語るのは薄っぺらな表面だけで、(言葉や文化を奪われる)深層の悲しみの厚さに比べれば、そんなのは複数語でもできる友情なのかもしれませんが…。
日本統治時代(日清戦争後から第二次世界大戦終了まで)に関わる映画「海角七号 君想う、国境の南」や「セデック・バレ」 を立て続けに発表された魏徳聖(ウェイ・ダーション)監督が「セデック・バレ」と同じ時代の高校野球を題材にした映画のプロデュース作品が今回の「KANO・1931海の向こうの甲子園」です。

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勝ち負けよりも野球をプレーすることを楽しんでいる嘉儀農林の子どもたち。しかし何とか周囲の学校と同じくらいのレベルにしてあげたいという教師は、元松商の選手であり、その後同校の監督としても鳴らした近藤氏を招へいします。
氏のスパルタ指導の下、そして的確な適所的題を見出す目により、嘉儀農林(KANO)は力をつけ、台湾№1となり海を渡って甲子園にやってきます。
その間、嘉儀の町で、そして甲子園で日本人から民族蔑視の言葉を投げかけながらも生徒同士の友情も、近藤氏の教育もそこに差別はありません。

この時代の映画は支配者として入った日本人が、原住民や漢人と呼ばれる中国本土から移住してきた客家とどういう関係にあったかが、理解する一番のカギになるような気がします。

そして『いい人』も居たし『悪い人』も居た、という極めてありふれた結論にたどり着きます。
どこの学校にも校歌(学歌)があり、同時に応援歌があるところも多いかと思いますが、僕の出身校も多分に漏れません。大根を持って踊る応援歌で有名な「青山ほとり」もありますが、そのほかにも「団結節」という応援歌があります。
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押忍、押忍、団結だ
押忍、意気だよ、その意気だ
北は樺太、北海道 南は九州、台湾の 猛者が集まる常盤松
(略)
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果たしてKANO(1931年)、大先輩が青春を謳歌していた農大には人種差別はあったのか?は、その時代を検証したことのない僕にはわからないですが、そして身びいきかもしれませんが、縦社会には厳しかった学校ですが、「農民」という結の文化、協力する作業団体ゆえ人種差別はなかっただろう、きっと嘉儀農林のように和気あいあいとしていた中であの団結節が生まれたのかな、とは思います。嘉農に人種差別がなかったのは農業がベースにあるような気がします。
いいものを作りたいという情熱は、差別などしている余裕を生みません。
それゆえ八田氏は烏山頭ダムが作れ、近藤氏は強いチームが作れたのでしょう。

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札幌商業の錠者投手も同様の差別よりもライバルとしての尊敬を優先した人の一人です。彼も切磋琢磨して『いいもの(野球)』を作りたいと願う人だったのでしょう。呉投手の投球、嘉儀農林の野球に対する取り組みはその後も脳裏から消えなかったのでしょう。彼はその後フィリピンの戦場に赴く際に、嘉儀の町に立ち寄り嘉儀農林の練習場を見に行きます。こんなところであいつらは練習していたのか…・、粗末なグランドを見て衝撃を受けます。

今、中国や韓国との間に「不審」という空気が流れています。ヘイトスピーチが日本でなされたりする報道が流れます。
でも、日本に住んでいる僕らから見てヘイトスピーチをするもの、嫌韓のものはそんなにいないと思うのです。ただ、そこにスポットライトを当てた報道ばかり見ていると日本中ではそうした空気が流れているように見えてしまいます。
でも、占領・戦時中でも嘉農野球部や烏山頭ダムの八田氏のような出来事もありました。『人として』正しい人もたくさん活躍していたことは、不幸な戦争を起こした国の子孫として、反省をしつつも少し安堵の思いを起こさせます。
歴史を「水に流して」はいけないと思います。しかし過去の和解が未来の友好につながることも確かです。プロデューサーならびに監督はじめスタッフからはそうした気持ちを汲み取ることもできました。本当にありがたいことです。

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さて、映画の中で、嘉儀の町を再現されたセットが流されました。失礼ながら台中・台南のはざまの小街、玉山(真珠湾攻撃の暗号に使われた新高山)の登山口のイメージでしたが、その再現された1930年代の町はモダンでおしゃれな街でした。
セディクバレの舞台となった霧社、埔里には一度行ってみたいと思っておりますが、続いてこの嘉儀や烏山頭ダムにも興味津々です。

熱血スポーツドラマなら最後は優勝で終わるのでしょうが、神様はこのチームに優勝の二文字は送られませんでした。しかし、それゆえに仲間たちの団結力も周囲に与えるインパクトももっと大きなものが得れたような気がします。
天下のKANO、楽しませてもらいました。多謝。

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