25'th anniversary Travel diary(7章3節 一考察その3)

浅野温子さんが挑発的な目で・・・・、スクリーンを眺めている男たちはそんな彼女の妖しげな美しさに思わず息を呑み喉仏をゴクリと鳴らす・・・・。そんな『スローなブギにしてくれ』の原作者、片岡義男氏の『アップル・サイダーと彼女』を読んだ。
250ページの然程厚くない本に50もの短編が収められているエッセイだ。しかし、そんな数多くのエッセイ集のタイトルが『アップル・サイダーと彼女』であることは、氏がこのアップル・サイダーと言う飲み物に、そして売り子に特別な思いを持ったのかと思い、古本を買った次第だ。

20101113-01


舞台はテネシーからヴァージニアに向かう郊外。『Take Me Home, Country Roads』とジョン・デンバー氏が歌ったあたりだ。そんなカントリーロードを走っていると、だんだん道が赤茶けて、そして埃臭くなって来る。
思えばルート66を走りたくってやってきたアメリカもだいぶ長くなってきて、本来の目的や期待感がだんだん薄れてきた感じだ。俺は何をやっているんだろう?そんな疑問が頭に浮かぶが、考えることもめんどくさいのでただ車を走らせる。
10月も終わりだというのにまだまだ暑い。今思えば、モーテルを出る時にコーラの一本でも買っておけばよかったって事。ハンフリーボガートや松田優作を気取るわけじゃあないけれど、モーテルの台所で、オートミールを炊いたが、熱そうなドロドロのオートミールがやけに俺に対して挑戦的なので、水道の水をぶちまけて冷やしてそのままディスポイザー行きさ。自宅ならきっと猫と一緒の食事で、そんなオートミールもおいしいんだろうが、旅先じゃあそんな相棒すらいない。

民家と民家の間の感覚がだんだん離れ、いよいよ肥料のにおいが強い田舎町さ。こんなところじゃあ、GSくらいしか立ち寄るところが無いな、と思っていたら、朝日が輝く中にアップルサイダーと書いた看板を出して、女の子がちょこんと座っている。

いつもの俺と明らかに違った。俺はその店の前で車を止めた。
鼻がつんと上を向いたおすまし顔の女の子が、可愛く笑った。2杯で5円。こんなお金で商売になるのかよ、笑顔に引かれて俺は注文をした。
この地方はりんごの産地ではない。しかし、アメリカ人はこのアップルサイダーが好きだ。バーのドアの向こうの大酒のみの姿ばかりを想像していた俺は、このなんとも甘い子ども向けののみものをいい大人が飲むとは信じられなかった。
ガラスの大きな容器の中から、子どもには難しそうな長いひしゃくを上手に使い、彼女はグラスにアップルサイダーを入れた。2杯でと言うのは、1杯目と2杯目のりんごの割合を変えているから、だから甘いのを飲んだ後、少しすっぱいのを飲んでね、と彼女は言った。

俺は決してロリコンではない、と思う。が、この屈託の無い笑顔の目には何か世の男性に挑発的に誘いをかけているような気すらする。妖しげな表情を見ている俺を楽しむかのように、彼女は俺の前で俺を見据える。俺は明らかに目の吸引力に引っ張られた沈没寸前のぼろ船だった。

フォードの5000ccのピックアップが俺の車の後ろに止まった。ドアを開けて出てきたのは、このあたりに住むファーマーか、テンガロンに銀色の手入れを丹念にされた口ひげ、スタンハンセンってプロレスラーが居たな、とぼんやりと思い起こすような体型だ。フォードのトラックが小さく見えるぜ。
彼はたち続けに2杯のアップルサイダーを飲んで50円玉をテーブルの上においてフォードに乗り込み立ち去った。

なるほど、5円だけなんかとケチってはいけないわけだ。ベースのお金に彼女へのチップ、これがかかるんだな、と俺もまねをして50円を渡した。
サンキュー、当たり前のように受け取った彼女の顔には既に笑顔は無く、次の車が来るほうに顔を向けている。笑顔の代価に50円は少ないわけか・・・・。おませな彼女はうらぶれた俺なんか以上に経営を知っている。
ローレライの歌声に引っ張られた船乗りたちはたちまち激流に飲まれて沈んだというのを読んだ。まさに今の俺は、引っ張られて浅瀬の岩で沈没してしまったようなもんだ。

40歳に近いのに俺はいったい何をやっているんだろう?
クリンチ・マウンテンの上空は日本では見られないような澄み切った青空が広がっていた。


・・・・っていうのは読み終わった僕の主観的な想像を含めたこの『アップル・サイダーと彼女』のあらすじです。あくまでも主観的な感想ですよ(笑)

PEIでアップルサイダーを飲んだ。エイキンさんのお宅を拝見させてもらった時だ。彼女のそれは、きっとりんごだけではなく何種類かの果物とシナモンなどの香り付けが入っていた上品なものだろうが、片岡義男氏がアメリカの片田舎を旅した時に飲んだそれはきっと素朴な味だったのだろう。
そしてその素朴感が忘れられない思い出だったのかもしれない。

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